私たち左派・リベラル(私は笑ったけど)は、なぜ吉住のデモネタを批判するのか

  過去最多の参加者だったピン芸人の祭典・R-1グランプリ2024(フジ系)は、決勝初出場で芸歴20年の苦労人である漫談師・街裏ぴんくの優勝で幕を閉じた。

 ファイナルステージで吉住、ルシファー吉岡といった腕っこきの実力者を下しての栄冠なのだから、優勝の値打ちは非常に大きいことは疑いない。

 街裏ぴんくさん、おめでとうございます。

 さて記事の本題は、惜しくも準優勝に終わった吉住、女芸人№1決定戦THE W2020優勝者がファーストステージで披露した「結婚の挨拶」ネタである。

 このネタがSNSを中心に物議を醸していると、複数のメディアで報じられた。

 スポーツニッポンの記事が、ネタの詳細を伝えている(いいのか?)。

 吉住演じる、おそらく国会前で開いたであろうデモに参加した女性が、終了後に恋人とともに相手の両親に会い、結婚の承諾を得ようと奮闘(?)する内容だ。

 このネタに「デモ参加者を揶揄している」と、SNSの方々から批判の声が上がっているのは私も複数確認した。

 基本的には私と立場を同じくする左派・リベラルの面々である。

 私はと言えば、TVerで大会の一部始終を視聴し、吉住のネタも観賞した。

 該当のネタについては、R-1予選の準決勝で既に披露されており、5chのスレでは「これが全国放送されたら吉住が叩かれるのでは…」という危惧も書き込まれていた。

 その状況を把握していた私は、吉住のネタをやや緊張しながら後追いで見たのだが、結論から言うと屈託なく笑わせてもらった。

 いや、特定の市民運動を腐しているんじゃないかという不安がぶっちゃけあったのよ。

 私も何度となく参加した、定期的な国会前デモを確立させた反原連(首都圏反原発連合)とかSEALDsとかさあ。

 戯画化したともいえる、吉住演じる現実離れしたデモ参加者の演技を見て「いや、デモにそんなやついねえよ」とつい安心して大笑いしてしまった。

 あと展開も、よく考え抜かれている。

 恋人との結婚を両親に承諾してもらうべく、火炎瓶を放り込んだ「仲間」の加勢を得てトラメガでまくし立てる吉住に、ついに相手の両親が折れる。

 しかしその言葉は「結婚を認めるからデモをやめてくれ」というものだった。

 デモは日本国憲法21条で認められた、市民の当然の権利である。

 息子との結婚を認める代わりに、憲法で保障された権利を奪おうとする。

 吉住やデモ仲間に恐れをなし、下手に出ておいて実は彼女の人生の「自由」を縛ろうとしている。

 コントにおける本当の「悪役」は恋人の両親ではないか…と考えさせられた。

 デモをよく知る左派・リベラルであればあるほど、吉住のコントを一部始終見れば「ただ単純にデモや、その参加者を揶揄・嘲笑する内容とは言えない」と気づくと思う。

 それはひとえに鬼才・吉住の作劇の技術とセンスが冴え渡った成果だと私はみている。


 ただそれを踏まえて、私と主義主張、思想信条の近い人々が吉住のネタに否定的な声を上げるのも理解している。

 だってテレビの前の皆さんは、よっぽどお笑い好き、考察好きでない限りは深く考えて見ないものだから。

 審査員に「静かな狂気」とたたえられた吉住の演技力に引っ張られて「ああ、やっぱ国会前に集まる人たちは危ない人たちなんだ、関わらないでおきたい、自分がデモに参加するなんてもってのほか」とテレビを眺める視聴者が圧倒的多数だろう。

 吉住を批判する人たちの肝はそこにある。

 自分がどう思われるかで腹を立てるのではなく、政権与党内で裏金づくりがされていた疑惑に市民が声を上げる機会を奪われかねないことに腹を立てている。

 だからこそ批判が沸き立っているのだと、当事者の吉住を含めて(何も目くじら立てなくても…)と思っている方々には伝わってほしいというのが私の思いである。

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